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東京地方裁判所 昭和46年(むのイ)902号 決定

被告人 上原敦男

決  定

(被告人、申立人氏名等略)

主文

本件準抗告を棄却する。

理由

一、本件準抗告申立の趣旨

(一)、原裁判のうち、接見禁止を維持した部分を取消す。

(二)、被告人に対する接見禁止を解除する。

二、申立の理由

本件準抗告申立の理由は、被告人は、昭和四五年七月二一日、強盗致傷、国外移送略取等各幇助の罪により東京地方裁判所に公訴を提起され、同月二二日、同地方裁判所裁判官により刑事訴訟法第八一条に則り弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者以外の者との接見および文書(新聞、雑誌、書籍を含む)の授受の禁止の裁判を受けていたところ、昭和四六年三月二四日、同地方裁判所裁判官により、右接見等禁止の裁判の一部を解除されて同裁判官の指定した書籍の差入れを許可され、ついで同年五月二〇日、原裁判官によりさらに右接見等禁止の裁判を一部解除され、父、母、兄との官製郵便書簡を使用した直筆の信書の授受および原裁判官の指定した出版社の刊行にかかる書籍の差入れ、自弁を許可されたものであるが、現在では、被告人の罪証隠滅および逃亡を防止するため接見等の禁止を継続する必要が存在しないから、原裁判のうち接見等禁止を維持した部分を取り消し、前記接見等禁止の裁判のうち解除されていない部分を解除することを求めるというにある。

三、そこで判断するに、裁判所又は裁判官のなした刑事訴訟法第八一条による接見等禁止の裁判に対し、被告人又は弁護人がその必要が消滅したとしてその取消を請求することができる旨を定めた条文はないのであつて、右取消を求める趣旨の申立は、裁判所又は裁判官の職権の発動を促すにすぎないものと解するほかなく、原裁判官もその見解にもとづき、弁護人の接見等禁止解除申請にかんがみ、職権により相当と認める限度で本件接見等禁止決定の一部を解除したものと解され、残余の部分につき特に却下、不許可等の裁判をしたものではないと認められる。したがつて、本件においては不服の対象となるべき裁判が存在しないものといわなければならないから、本件準抗告は不適法であり、その手続が規定に違反するものとして刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第一項によりこれを棄却すべきものである。

よつて、主文のとおり決定する。

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